LICHT

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TAKAHIRO TSUCHIDA
DESIGN COLUMN Vol.5
Olio cutlery - Barber & Osgerby

まだ行ったことはないけれど、ぜひいつか行ってみたいショップに、ニュージーランドのEveryday Needsがある。オーナーのKatie Lockhartはインテリアのデザインやスタイリングも手がける人物で、たとえば2018年4月にミラノ郊外のOsvaldo Borsani邸を公開したエキシビション「Casa Libera」にはスタイリストとしてかかわっていた。この催しをキュレーションしたのが、「Design Miami/」初代ディレクターのAmbra Medda。彼女がニュージーランドを旅した時、Everyday Needsに偶然立ち寄ったのが、ふたりが知り合うきっかけだったはずだ。ちなみにMeddaは、それと前後してデザインスタジオBarber & OsgerbyのEdward Barberと結婚している。

数年前、Everyday Needsのウェブサイトを見ていて気になったのが、Barber & OsgerbyによるRoyal Doultonのテーブルウェア「Olio」 だった。発売のタイミングからして、Meddaが夫の新作をLockhartに薦めたのかもしれない。そんな詮索は別にしても、Olioの雰囲気はEveryday Needsのスタイルにとてもよく合っていた。しばらくして入手したOlioの器やカトラリーは、結局、それから毎日のように使用している。いずれも日用品としての使いやすさを重視した形態だが、同様のテイストのものと一緒に組み合わせことで、気持ちを落ち着かせるような独特の空気をつくる。

特に Olio のカトラリーは、Barber & Osgerbyにとってデザインするのが難しかったのではと想像する。デザイナーが手がけたシンプルなカトラリーには、Kay Bojesen、David Mellor、柳宗理によるものをはじめいくつもの名作があるし、何よりJasper Morrisonの「KnifeForkSpoon」のように現代のカトラリーの集大成のような製品がある。それらとは違う何かをもちながら、余計な個性を主張しない、使いやすい形が探求されたのだろう。おそらくOlioのカトラリーは、KnifeForkSpoonと同一線上に位置づけられるが、フォルムのメリハリを抑え、自然な重量感と安定感をそなえさせている。つまりアノニマスなデザインにより近い。変化する時代にあえて抗うようなあり方に、つくり手の意外な気骨を感じることができる。

土田貴宏 / ライター、デザインジャーナリスト

1970年北海道生まれ。2001年からフリーランスで活動。国内外での取材やリサーチをもとに、デザイン誌をはじめ各種媒体に寄稿している。

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